エチュード〜さよなら、青い鳥〜
そう言い切った初音に、四辻はドキリとした。

迷いを振り切った彼女の強い意志を感じる。
醸し出す眩しいくらいの存在感は、丹下家の血筋なのだろう。

「建前、ですか。よく分かりませんが、それで社長が良いならば」

「言ってくれるじゃないか、初音。これでもウチの会社、転職したい企業ランキングで上位なんだぞ?
ま、それにしても。
四辻くん、君はやっぱりすごいや。
初音をついにヤル気にさせた」

ポンポンと四辻の肩を叩いて広宗は笑う。

本来の初音は、ピアノに真摯に向き合い、自信に満ち溢れ、ダイナミックな演奏が得意だった。
それが、高校卒業する頃から自信を無くし、滅多に人前で演奏しなくなった。

家族もどうしたらいいかわからず、見守ることしか出来なかった。

それが、コンクール出場という前向きな一歩を踏み出そうとしてくれたことは嬉しい。


< 34 / 324 >

この作品をシェア

pagetop