エチュード〜さよなら、青い鳥〜
四辻は、ドアに伸ばした手もそのままに、ゆっくりと視線を初音に向けた。

初音の言葉の真意がわからない。
どの程度の付き合いを求められているのだろう。

四辻は、改めて初音を見る。
大きく、パッチリとした瞳。鼻は高く顔は小さく、可愛いというより派手なイメージの美人。
肩までの髪は日本人形のように真っ直ぐ。背も高く、スタイルも良い。
あの日初めて彼女の演奏を聴いた時には知らなかったが、丹下家の御令嬢。
言われてみれば、見た目の華やかさに加えて、立ち振る舞いにも品があって美しい。
間違いなく、モテるだろう。


ここは、やはり社員として一定の距離を確保しつつ、彼女のピアノを応援すべきだと、答えを出す。


「私の連絡先なら、社長がご存知ですが?」


「もちろん、知ってるけどさー。たとえ娘にでも、個人情報は本人の承諾なしに勝手に教えたりしないぞ。
面接は終わったんだ。
四辻くんは、初音に興味あるよな?
ピアノのコンクールってさ、周囲の支えもすごく大切なんだよ。君は初音をヤル気にさせたんだから、色々手伝って支えてやってくれない?」

社長の発言は軽い。だが、交際を暗に認めている、とも取れた。
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