エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「留学するんだ」

目の前に座っている梅田(うめだ)は初音にそう告げた。

「初音は?」
「私は、梅田みたいにコンクールで優勝した実績もないし」

大学のカフェテリア。外のテラス席で初音は小さくため息をついた。留学すると決めた同級生はこれで何人目だろう。梅田は、留学への期待に満ち、晴れ晴れとして見える。

初音は梅田との会話には興味もなく、早くこの場から立ち去りたかった。

手持ちぶさたで、食べていたクッキーのかけらを地面に撒く。小鳥が寄ってきてそれをつまんだ。
名も知らない小鳥だが仕草がかわいらしく、なんだか幸せな気分になる。もっと近寄って欲しくて足元に撒いてみるがあまり近いと寄ってきてくれない。警戒心が強いようだ。


ーー別に捕まえたりしないのに。
ちょっとだけ幸せな気分になれたのにな。


クッキーはもう残っていない。小鳥も居なくなってしまった。

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