エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「こんばんは、四辻さん」
「こんばんは」
初音は、さりげなく空いていた四辻の隣の椅子に座った。四辻は、そっけない挨拶を返してきた。
「四辻さん、ベートーヴェンは好きですか?」
「ピアノソナタでしたね。それほど詳しくはありませんが、全曲聴いたことはあります」
その時、前の演奏者が弾き終わるタイミングで、梅田がピアノに向かって行った。
ちらりと初音に挑戦的な視線を送ると、鍵盤に指を置く。
「あぁ、やっぱり。梅田、目立ちたがり屋だから弾くと思った」
隣の四辻だけにしか聞こえないくらいの小さな声で初音がつぶやく。
梅田の技術は素晴らしい。難曲をいとも簡単に弾きこなす。聴いている周囲の客も、感嘆の息をもらしている。
だが。すぐに皆、会話に戻っていく。上手いねと言いながら、自分達の時間へと戻っていく。梅田のピアノをBGMにしながら。
「彼は、私と同じコンクールに出るんです」
「実は君たちの話が聞こえていました。コンクール出場を就職の条件にしたいと言った意味がよく分かりましたよ。彼らは、ライバルですか?」
「…私は私の演奏をするだけですから」
「こんばんは」
初音は、さりげなく空いていた四辻の隣の椅子に座った。四辻は、そっけない挨拶を返してきた。
「四辻さん、ベートーヴェンは好きですか?」
「ピアノソナタでしたね。それほど詳しくはありませんが、全曲聴いたことはあります」
その時、前の演奏者が弾き終わるタイミングで、梅田がピアノに向かって行った。
ちらりと初音に挑戦的な視線を送ると、鍵盤に指を置く。
「あぁ、やっぱり。梅田、目立ちたがり屋だから弾くと思った」
隣の四辻だけにしか聞こえないくらいの小さな声で初音がつぶやく。
梅田の技術は素晴らしい。難曲をいとも簡単に弾きこなす。聴いている周囲の客も、感嘆の息をもらしている。
だが。すぐに皆、会話に戻っていく。上手いねと言いながら、自分達の時間へと戻っていく。梅田のピアノをBGMにしながら。
「彼は、私と同じコンクールに出るんです」
「実は君たちの話が聞こえていました。コンクール出場を就職の条件にしたいと言った意味がよく分かりましたよ。彼らは、ライバルですか?」
「…私は私の演奏をするだけですから」