エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「じゃあやっぱり、『アリオン』か?最強のコネがあるもんな。いいよなぁ、俺もアリオンに入れるなら留学なんてしないよ」
『アリオン』といえば、オーディオ、テレビ、パソコン等の電化製品をはじめ、音楽制作も手掛ける日本が世界に誇る大企業だ。
創業者は初音の曾祖父。現在は、初音の祖父が会長を務めている。
「コネ入社なんてつまらないわ」
「またまた〜。親父さんの手伝いとかだっていいじゃん」
初音の父は、“創業者一族が経営する時代じゃない”と『アリオン』の子会社『アリオンエンタープライズ』を自ら創設し、経営していた。
「私はただ、ピアノを弾ければいいの。梅田はいつから留学するの?」
「10月から。
…だからさ、初音、留学する前にさ、オレと付き合わない?」
初音は、目の前の同級生をじっと見た。
友人なら構わないが、それ以上の関係になりたいとは全く思えない。
「うーん」
「今、特定の彼女いないからさぁ」
「…辞めとく。外国人の女の子と比べられたくないから」