エチュード〜さよなら、青い鳥〜


月の光に照らされて、美しい旋律が奏でられた。




初音の開いた楽譜には、びっしりと書き込みがされている。指は楽譜通りに弾いている。

だがやはり、感情豊かに弾くことができない。
甘く切なく、ショパンの美しい音にならない。


上手く弾きたいのに、弾けない。


ロマンチックとは程遠い。やはり、抒情的な表現力が足りない。


何とか最後まで弾き終えたとたん、初音は両手で顔を覆った。


「すみません、四辻さん。私には難しい。
もっと、上手く弾きたいのに…」

「…伝わりましたよ。
お世辞にも素晴らしい演奏とは言えませんが、俺の為に不器用だけど一生懸命に奏でてくれた。
それが、俺には嬉しい」


嬉しいと、そう思ってくれた。それでも。


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