エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ーーキスを避けられた。

だが四辻は、そう思ってしまう。もしかしたら、恋愛感情を持っての付き合いを求めているわけじゃないのかとも思えた。

「あ、でも、君は同級生の男の子、ほら、今日一緒にソレアードに来た男の子と付き合ってるんじゃないのかい?」

「同級生…?もしかして、大輔?大輔ならただ同じ先生についてるだけ」


初音は、四辻の体に腕を回した。
ぎゅっと抱きついて、目を閉じる。


父譲りの派手な見た目。男ウケするスタイルの良さ。おまけに“アリオンの丹下”というブランド付きで、昔から初音はモテた。
自分から行かなくても、いつも誰かしら寄ってくる。


だから、初めてだった。
離したくないと、こんなに強く誰かを求めたことは。



本気で望めば何でも手に入る。
たとえ、それが人の心でも。



この時の初音は、愚かにもそう信じていた。










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