エチュード〜さよなら、青い鳥〜
雪辱のドレス
初音は大学での練習を終え、一人銀座の街を歩いていた。
ふと鮮やかな青い鳥の写真が目についた。ギャラリーで野鳥の写真展をするというポスターだ。なんと、都心の公園で撮影したらしい。
大輔のリュックの柄といい、今日はやけに青い鳥が目に止まる。
絵や写真とはいえ、幸せを運ぶという青い鳥になんだか心が弾む。二次予選も上手くいきそうな気がした。
有名ブティック店の前では、若いカップルが寄り添って店頭の商品を眺めていた。
「素敵なドレス!ねー、結婚式のドレスはやっぱりJUNNZO SUZUKI のドレスがいいー。一生に一度だもん。やっぱりこだわりたいよ」
「う…でも、この値段…ごめん。無理。レンタルにもJUNNZO SUZUKI ブランドあったよね?それじゃ、ダメ?」
「えー。しょーがないか、高いもんね。レンタル見に行こ」
カップルはちらっと初音を見てから、手を繋いで去っていく。
結婚間近の幸せカップル。後ろ姿でさえ好きがあふれて見える。
ーー今はピアノのことでいっぱいだけど、私だって好きな人とデートとかしたいな。
ふと四辻の真面目な顔が浮かぶ。
手を繋いだりとか、イチャイチャするなんて無理そう。せめて一緒にご飯食べたりとか、コンサート見に行くとかしたいな。
「丹下様、いらっしゃいませ」
初音が店内に入ると、店長がすかさずやってきた。
「こんにちは。ジュンさん、いる?」
「はい!丹下様がいらっしゃるのをお待ちしていました。こちらへどうぞ」
店の奥、関係者以外立ち入り禁止の特別VIPルームに案内された。