エチュード〜さよなら、青い鳥〜
思いもかけない人から接触があった。
アリオンの子会社アリオン・エンタープライズの丹下広宗社長。社長自らアリオンにやってきて、応接室に四辻を呼び出したのだ。


『四辻くん、アリオン・エンタープライズで人事労務管理の仕事しない?』


忘れもしない。応接室での初対面、第一声がそれだった。


「人事労務管理とは、今の業務とはずいぶんとかけ離れておりますが、何故、私に?」


「うちは基本経験者しか入れないんだけど、なかなか適任者が見つからなくて。
そうしたら、最近、偶然君の名前を二回聞いた。それで興味を持ってね」


「私の名前を、二回?」


「うん。一度目はね、俺の友達に一条グループの顧問弁護士がいてさ。この間、一条グループのイベントで、そいつに高司先生ってベテランの弁護士を紹介されたんだ。
俺が人事労務管理担当者を探してるって言ったらさ、“実はうちの孫がアリオンで働いてる”って、君の名前が出た。
真面目でコツコツタイプ。自分は押し殺して、周りをサポートすることが出来る。多分、人事労務管理のような縁の下の力持ちの仕事は向いていると思うと、高司先生はおっしゃっていたんだ」

弁護士をしている母方の祖父の顔が思い浮かぶ。四辻をとにかく可愛がってくれた。初めてのクラッシックコンサートに連れて行ってくれたのも、その祖父だ。

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