【完結】警察官な彼と危険な恋愛白書
「…………」
あたしは、何も言うことができなかった。刑事さんの優しさが嬉しかったのは、確かだった。
だけど……。
「……すみません、本当に。思い出してしまうかもとは、思いました」
「……いえ。もう20年も前のことなので」
どうして刑事さんがそんなことを言うのか、あたしたは理解できなかった。分からなかった。
「……さ、着きましたよ。入りましょう?」
「……はい」
お店の中に入ると、彼はまたこの前と同じ、奥の先へと座った。向かい合うようにして。
「今日のハーブティーは、本日のオススメにしましょうか」
「え?あ、はい」
ハーブティーを注文してから待つ間、お互いに沈黙していた。
何かを話そうと思ったけど、何を話したらいいのか分からなくて……。何も言えないままだった。
ハーブティーがテーブルに置かれてから、最初に口を開いたのは、刑事さんだった。
「……さ、飲みましょう、温かいうちに」