【完結】警察官な彼と危険な恋愛白書


 裕太さんはあたしのそばまで来ると、あたしの手をギュッと握った。久しぶりに感じる、人肌の温もり。それはとても温かくて。本当に愛おしくて……。

 「裕太さん……」

 あたしはもう、涙が止まらなかった。抑えなくても、溢れて止まらなかった。

 「若葉さん……生きててよかった……。本当によかった……」

 よく見ると、裕太さんも泣いていた。裕太さんが泣く所を初めて見た。……嬉しかった。あたしのために、こんなに泣いてくれるなんて……。
 
 あたしは、幸せ者だな……。裕太さんにこんなにも心配してもらえて。涙まで流してもらえて。こんなに幸せなこと、今までないと思った。

 「笹木さん、夕方に点滴や血圧、体温チェックしますので。ゆっくり休んでください」

 「……はい。ありがとうございました」

 担当医師と看護師さんが病室から出た後、あたしはゆっくりとベッドから起き上がった。

 「若葉さん!まだ動かない方がいい」

 「大丈夫です……」

< 243 / 257 >

この作品をシェア

pagetop