【完結】警察官な彼と危険な恋愛白書
「警察によりますと、犯人は被害者の背中を包丁で刺した後、怖くなり逃走したと自供しているとのことです」
「……人を刺したくせに逃げるなんて」
許せない。どうしてそんなことをするんだろう。
そしてふと思い出す。……あたしの父親が、通り魔に刺されて亡くなった時のことを。
「……っ、また思い出して……」
こうやって不吉なニュースを見るたびに、時々思い出す。父親の死のことを。
あたしの父親は、20年前、ちょうど10歳位の時に、たまたま通りかかったそこの人通りの多い道で、通り魔殺人に遭った。
父親はあたしと母親を助けようとして、刺されてしまった。
そしてあたしの目の前で……血を流しながら死んでいったんだ……。
あの時の父親の姿を、今でも忘れない。
20年前の出来事なのに、忘れられる訳がない。
……警察官が到着した時にはもう、父は息をしていなかった。
目の前で死んだ父親の見て、声も出せなかった。