【完結】警察官な彼と危険な恋愛白書


 ムリに話さなくてもいいと言ったけれど、話したいからと言って。

 だから俺は、話すことを止めなかった。彼女がそう望むのなら、俺は彼女の話を最後まで聞いてあげようと、思ったからだ。

 「……父親を目の前で失ったあたしは、事件のショックで、その部分の記憶を失ったんです。……思い出したくても思い出せなくて……。そして23歳の時に、その男が刑務所の中で亡くなったってニュースを見て、思い出したんです。……その時の記憶を」

 「……そうだったんだね」

 「……本当に悔しかった。悪かった。そいつを、殺してやりたいとさえ思った。……だけどそんなことしても父は帰ってこない。そんなこと分かってた。でも、悔しかった……」

 「……笹木さん」
 
 「なんであの男は死刑にならなかったのか。どうして無期懲役だったのか。……父を殺して、他の人まで巻き込んで、傷付けたくせに。なのにどうして、死刑にならなかったのか。……許せなかった、ずっと」

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