いつか夏、峰雲の君
……どれくらいの時間を、二人で手を繋いでいたかは覚えていない。
もしかしたら10分なのかもしれないし、10秒なのかもしれない。
ただ僕の隣にいる彼女は、確かにそこにあった。そして幸せな時間には、必ず終わりがやってくる。
「おーいとうごー! なつきー!」
その時やってきた勝平は、僕たちを見ていないと言った。
確かにそう言ったが、それが嘘だと長年の付き合いですぐに分かった。田畑勝平とはそういう男なのだ。
その時の僕は彼を恨んだが、今の僕は感謝もしている。結局彼は、他の誰にもその事を話さなかったのだから……
「かっぺい!? 何でここに!?」
「だーれーがかっぺいだ! 勝平だっていっつも言ってるじゃねーか!」
「で、どうしてここにかっぺい君が?」
「だぁくそっ、夏希までっ。人の名前ぐらいちゃんと覚えやがれーっ!」