いつか夏、峰雲の君
夏希のおばあちゃん、雲ばぁが教えてくれた役に立たない豆知識。
巡る季節には、それぞれ色が割り当てられていると。春は青、夏は朱、秋は白、そして冬は玄……
青は新緑の色。命が芽吹き、新たな出会いが始まる季節。昔は緑という言葉が無くて、青という言葉が二つの色を表現していたらしい。
朱は火の色。夏の燃えるような暑さが、それに例えられたのかもしれない。春に芽吹いた新緑は空に焼ける太陽の下で、膨れ上がるように大きくなっていく……。
白は鈍く輝く石の色。昔の人は金や銀の鉱石の色を、まとめて白と呼んでいたという。膨れ上がった命は盛りを終え、やがて己の意味を知る。それはまるで、黄金に輝く稲田の穂の様に。そして玄は……