いつか夏、峰雲の君

「……ありがとうね登吾ちゃん。夏希の為に悲しんでくれて」


 雲母村の匂いが、僕を優しく包み込む。


 少しだけ夏希に似た懐かしい匂い。雲ばぁが、僕の体を抱きしめていたのだ。


「夏希はね、峰雲になったのよ。峰雲になって、登吾ちゃんを見守ってくれるの。これからずっと……」


 だから——。その時雲ばぁの一言が、僕の人生を決定的に……


「——だから登吾ちゃんも、夏希の事を忘れないでいてあげて。あの雲と一緒に、夏希は生き続けるから」
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