イケメン生徒会長の甘くて危険な溺愛
*
夏休み開始まであと数時間。
浮足立った生徒たちの声で騒めいていた体育館も、生徒会長の登壇で一気に静まり返る。
お約束、お約束。
私は心の中で呟いて、ぼんやりステージを見上げた。
『黒髪クールな会長の初ステージ』
『遠くから見る黒髪かっこいい』
『金髪も恋しいけどねー』
こそこそと話す声が、どこからともなく聞こえてくる。
そう、3カ月と少し前、鮮やかな金色の髪にブレザーを着た会長は、今と同じようにステージに立っていた。
あの時は、他人だった。
なにもかも、知らない人だった。
でも。
俺様な態度も、身勝手な性格も、好きな食べ物も…優しいところも。
今は、少し知ってる。
それなのに、ここから見る会長はとても遠くて、目さえ合わない。
だからどうってこと、ないけど。