イケメン生徒会長の甘くて危険な溺愛


「そうだな。今週中に各クラス実行委員選出してもらおう」

副会長が頷くと。


「あー…また忙しくなるな」

会長はすんなりと生徒会長モードに戻って、低い声で言った。


「備品のチェックリスト残ってるっけ…」

「流奈が管理してるはずだ」

「えっ流奈…?」


真面目に話しはじめる会長の横顔は、凛として。


そうだ。


本当の会長は、バカンスもビーチもパラソルも公園さえも遠い、夏休みを過ごしたんだ。


ぽっかり開くような距離を、私は感じる。


楽しかった?夏休み。


会長の、高校最後の夏休み。

ちゃんと楽しかった?


聞きたかったのに、聞けなかったこと。


小さな、埃みたいに小さな、だけど確かな不安が、心の中を転がっているのに、私は気づいていた。

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