イケメン生徒会長の甘くて危険な溺愛


放課後。


先生に呼び出されたきょうちゃんを待つ時間潰しに、生徒会室へと歩いてみた。


廊下はしんと静まりかえっている。


1階の廊下の突当たり。


大きな木製の扉に、真鍮のドアノブ。

そっと握って回してみると、その扉はギィと鳴いて開いた。


…鍵、閉め忘れてるな。


私は呆れつつ、そっとそこへ入る。


ワインレッドの絨毯が敷きつめられ、大きな書棚に囲まれた、古めかしくも豪華な部屋。


電気のついていないそこは、窓から差しこむ夕方の鈍い光で満たされていた。


それはどこか、過去の思い出みたいな懐かしい光景で。


いつもなら会長や副会長や流奈さんがいて、わいわいと騒がしいこの部屋も、今は無人。


もうすぐ冬がくる。


冬がきて次の春がくる前に、会長はいなくなる。


この学校から。



そんな当たり前を想像するだけで、切なくて泣きたくなってしまう。



…重症だ。


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