イケメン生徒会長の甘くて危険な溺愛


「付き合って、ませんよ」


黒目がちな目を少し丸くする友梨子さんに、私は言う。


「でも、一緒にいることが増えたのは、今年の春からです。それまではほとんど関わりのない人でした」


友梨子さんは、うーんと考え事をするような顔をしてから、呟いた。


「…時期が合わないな」

「…?」


時期って、なんだろう。


それからなにも言わない友梨子さんに、私は小さな声で聞く。


「会長の、婚約者って本当ですか」

「…会長?ああ、そうか透くん、生徒会とかやってるんだっけね」


私は頷く。

透くん、そう彼女が呼ぶことにさえ、嫉妬している自分を隠しながら。


「そう、婚約者。もっと正しく言うと、許嫁ってやつね…」

「許嫁…」


現実感のない単語だな。


きょうちゃんが聞いたら、少女漫画的名詞、とか言いそうだ。


< 363 / 432 >

この作品をシェア

pagetop