イケメン生徒会長の甘くて危険な溺愛
ぼやける視界で最後に見たのは、呆然とした会長の顔。
私の頬に触れている会長の右手を、両手で包んで、右腕で自分の顔を隠す。
会長の右手が、私の涙で濡れていく。
どうしてなにも言わないの?
言い訳してよ。
婚約者なんて嘘だよって。
俺は案外、普通の男なんだぞって。
ちゃんとお前が好きだよって。
分かってる。
あなたは、言えないから、言わないの。
ねぇ会長知ってる?
冬がきて、春がくるよ。
そしたら、ねぇ。
諦めるの?
私のことも。
他のすべてと一緒に。
あなたの愛しいすべてと一緒に。
手離す自由に、葬るって。
そうするって、決めてたんでしょ?
だから、だからずっと、私の気持ちも聞かなかったんでしょ?
生まれた時は埃みたいに小さかった不安は、どんどん胸の中で大きくなってた。