貴女を僕のモノにしていいですか?
「それじゃあ帰るね。おやすみ」

ピーターはベランダに立ち、ジェニィに微笑みかける。しかし、ジェニィはピーターに背を向けてしまっているので、その微笑みはジェニィに見えないのだが。

「……おやすみ」

ジェニィがそう返してから、ピーターはベランダから離れる。そして夜の街を駆け抜けて自分の家へと帰るのだ。

ジェニィが一日の終わりに会う人間が自分だということが、ピーターにとって嬉しくてたまらない。怪盗と依頼人という関係であったとしても、幸せなのだ。

闇に溶け込んで二つの目がまた光る。



数日後、念入りに作戦を練り、今夜もピーターは無事にジェニィの望む宝物を盗めた。手に入れたのは、前にジェニィが「ほしい」と言った蝶の標本だ。

「ジェニィ、盗ってきたよ」

「これがあの蝶の標本ね!実物で見た方が綺麗だわ」

疲れたように笑うピーターの目の前で、ジェニィは煌めく蝶の標本をじっくりと観察する。そして満足そうに頷いた。
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