貴女を僕のモノにしていいですか?
「ジェニィ……」

ピーターはジェニィの顎を持ち上げる。そのままジェニィにキスをしようと思っていた。ジェニィの唇に触れられるなど、どんな宝物を手に入れるよりも価値がある。

「ジェニィ……」

もう少しで二人の距離はゼロになる。ピーターの胸の高鳴りが最高潮になった刹那、「ちょっと待ちなさい!」とジェニィに思い切り叩かれた。ピーターの頬がジンジンと痛む。

「私の唇は安くないの。やすやすと奪われてたまるもんですか!」

ジェニィは強気なことを言っているが、その頬は赤く染まっている。ピーターはポカンとした顔でその様子を見ていた。

「さあ、次はあれがほしい!十七世紀にルイス国王が戴冠式で身につけたマント!」

「はあ……。まだ僕のモノにはならないか……」

ピーターはジェニィを残念そうに見つめた後、仕方ないかと微笑む。いつか、この関係が恋人になれればいい。そしていずれは彼女の人生も手に入れたい。ピーターはそう思いながらジェニィを見つめる。

怪盗にも簡単に盗めない宝物があるのです。
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