だから私は、今日も猫を被る。
彼女たちが笑うから、私も笑顔を浮かべた。
ふつうに話せば楽しいし、笑うことだって躊躇わずにできる。
今までだってそうやってきたから、同じようにその場を楽しんでいるように振る舞えば全てが丸く収まる。
「ねえ、やっぱり一緒にSNSしない?」
ひとしきり笑ったあと、話題は少しよからぬ方向へと進んでしまう。
SNSのお誘いは、これでもう何度目だろう。
そのたびに私は断る理由を見つけては、罪悪感を感じているというのに、と心の中で小さくため息をついた。
「そうだよ。七海もやろうよ! きっとみんなでしたら楽しいよ!」
「いや、ほら私、機械とか疎くて、SNSとかいまいち分からないからさ…」
「だったらうちらが教えるって!」
お弁当を食べるのをそっちのけで私を説得しようとする二人。
べつに二人に悪意があるわけじゃないと、私は知っている。
ただ楽しいから一緒に始めようとお誘いをしているだけだ。
強制させられるわけではないし、強引に押し切られることもない。
けれど、みんなでSNSをするというのがどうしても前向きになれないのだ。
友人同士で始めたら、アカウントはバレバレで言いたいことも呟くことができないし、友人が何かを投稿したら"いいね"を押さなければいけない雰囲気がある。
オシャレな投稿をしたら、私も頑張らなきゃって無理をするようになる。
競い合うとまではいかなくても、見栄を張らないと二人に釣り合わなくなるんじゃないかって思うようになる。
最初のうちはよくても、あとから段々と窮屈になってくるのは目に見えていた。
だから私は何度も理由をつけて断っている。
二人は好意で私を誘ってくれているのに、"やりたくないから"なんて言ってしまえば、角が立つに決まってる。