だから私は、今日も猫を被る。


早苗さんに悪気があるわけじゃない。
早苗さんは悪い人ではないから。
それは四年も一緒に生活していたら、嫌でも見えてくる。
けれど、私だけが過剰に反応して、周りのことに敏感になる。
ちょっとのことを大袈裟に捉えてしまう。

こんな自分、なんて面倒くさいんだ。
仮面を剥いだら全然いい子なんかじゃない。
自分が一番自分のこと嫌いだ。


ベッドの上に放置されていたスマホが目に入り、私はそれを掴むと、SNSを開いた。
すると、さっき私がコメントしたことに対して"いいね"が一つつけられていた。

たったそれだけのことで、心が穏やかになる。
あお先輩が私という存在を否定せずに受け止めてくれているような、そんな気がして、無意識に泣きたくなった。

いい子の私は、今日も頑張った。
ほんとに偉い。すごい。自分を褒め称える。

ベッドに寝転がって天井を仰ぐと。


「……明日もまた頑張らなきゃ……」


終わりが見えない明日に対して少しだけ恐怖する。
そんな夜を私は毎日過ごすのだ。
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