だから私は、今日も猫を被る。
「あ、えと……」
言葉を取り繕おうとするけれど、頭が真っ白になったせいで言葉はおろか誤解まで取り除けそうにない。
「おーい、ホームルーム始めるぞー」
そんな中、何も知らない先生が名簿を片手に教室へ入って来た。
クラスのただならぬ雰囲気を読み取って、
「何かあったのか?」
と尋ねるけれど、大抵の人は知りません、と口をつぐんで自分の席へと戻る。
「じ、じゃあうちらも戻るね」
「だ、だね」
気まずそうに私にそう告げると、そそくさと席へ戻る二人。
その瞬間、私と二人の友人の糸は途切れたと悟った。
ほんの数分前、今度埋め合わせをする、と約束をしたのに、その約束は果たされることなく瞬時に砕け散る。
虚無感、喪失感、絶望感、全てが私を襲ってくる。
のどの奥がぎゅーっと苦しくて、胸の奥がチクチクと痛くて、息が、視界が、何もかもが消えてなくなりそうになる──
「おいっ、花枝!?」
先生の焦った声が聞こえてくるけれど、私は立ち止まることなく走った。
どこへ行くあてもなければ、目指している場所もない。
ただただ私は足を進めて、前へ前へ進む。
大きく息を吸える場所を求めて、
一人になれる場所を探し求めて──。