だから私は、今日も猫を被る。
屋上へと続く階段までやって来ると、そこに座った。
教室を抜け出したのに息が苦しい。
ハア、ハアと息が上がる。
全速力でここまで駆けて来たからだろうか?
これからの毎日に恐怖しているのだろうか?
それともべつに理由があるのだろうか?
お弁当そっちのけで私は膝を抱えて顔を埋(うず)めた。
──ピコンッ
メッセージの通知音が鳴る。
私は力なく顔をあげると、階段に置いていたスマホに手を伸ばす。
『ちゃんと飯、食べてる?』
あお先輩からの何気ないメッセージに私は込み上げるものを感じた。
『もうやだ』
震える指先で文字を打ち込むと、ものの数秒で通知音が鳴る。
『今、どこ?』
その言葉を読んで、あお先輩が言った言葉が頭に浮かんで、きゅっと唇を噛みしめる。
『屋上の階段』
敬語なんて取っ払ってそれだけを簡潔に打ち込むと、すぐに既読がついて
『すぐ行く』
返信が届いた。
頭の中であお先輩の声がリピートされる。
泣きたくなった私は、膝を抱えて縮こまった。