だから私は、今日も猫を被る。
◇
お昼休みが終わったあと、教室へ戻ると、ドアの前でばたりと友人二人に遭遇する。
「あ」
「「あ」」
お互い思わず声がもれる。
こういうときって何か言葉をかけた方がいいのかな。でも私が一方的に八つ当たりしちゃって気まずいし……。
頭の中でぐるぐると考えていると、
「えーっと、私たちちょっと急いでるから」
「そ、そう! …じゃあね!」
矢継ぎ早に言葉が流れてきて、私が返事をする前に二人はそこからいなくなる。
せめて何か一言でも言えばよかったのかな。
この前はごめん、って。あのときはちょっとイライラしてたからって言い訳でもして謝れば、また元の日常が戻って来たのかな……。
そしたらまた楽しくおしゃべりする?
でも私、ほんとに仲直りなんてしたいのかな。今の状況の方が一人で気楽なんじゃなくて……?
やめやめ、と頭を振って考えを吹き飛ばすと、クラスメイトの視線を遠目で感じながら、自分の席へと最短距離で向かった。
席に座って周りを見渡すと、まだみんなそれぞれの場所で楽しくおしゃべりをしたり、お菓子を食べたりしている。
つい最近まで私もあんなふうにしてた。
楽しいかどうかはべつとしても一人になることはなかった。だから心強かった。
でも、私はあんなふうにすることはもうできないんだなあ……。
クラスメイトは私をチラチラと見ては、何やら話をする。
元々そんなに話すわけではなかったけれど、些細な何気ない会話くらいすることはあった。
でも今はそれすらもなくなった。
まるでみんな私に関わりたくないかのように、視線がぶつかってもすぐに逸らされたり、話しかけないでほしいというような雰囲気さえ感じ取れた。
ああ、そっか。やっぱりみんないい子の私だけを見ていたんだ。誰も内面は見てくれてない。
そう気づくと、胸がぎゅっと圧迫される。
こんな感情のままあと一年半過ごさないといけないの?
そんなの無理だよ……。
私、そんなに強くない。
いい子の仮面を剥いだ私の防御率なんてほとんどゼロに等しいんだ。