だから私は、今日も猫を被る。
「──花枝さん」
ふいに声がして顔をあげると、メガネをかけた委員長がそこにいた。
そして、これ、と言って私に手渡したプリント。
そこに視線を落としていると、
「それじゃあ私はこれで…」
と足早にその場を去る足音だけが耳に入り込んだ。
ありがとう、さえ言う暇も与えられることなくいなくなる。
いくら私と関わりたくないからってあまりにも露骨すぎるでしょ……。
視線を周りへ向ければ、ササッと逸らされる。
まるでだるまさんが転んだをしているような気分だ、なんてとてもじゃないけど楽観的にはなれそうになかった。
みんなしてなんなの。
私をクラスの除け者にでもしたいの?
団体行動の輪にうまく溶け込めない人はこうやって爪弾きにされる?
何もかもがうまくいかない。
──学校も、人間関係も、家族も。
負の連鎖が続いていくばかりで、曇り空のようだった。
結局みんないい子の私だけを見ていたってことなんだ。
仮面を剥いだ私なんて必要ない、みんなにそう言われているようだった。
机の上に置いたプリントの上でぎゅっと拳を握りしめると、くしゃりとよれてしわになる。
そんなことをしても気持ちは晴れることはなくて、ただただ虚しいだけで。
窓の外は、晴れとは程遠いほどに重たい灰色の雲が空を覆っていて、今にも雨が降り出しそうなほど。
──私の心もそれと同じだと感じ、より一層心がずっしりと重くなった。