だから私は、今日も猫を被る。
14.ヒーローは必ず現れる
少し街の方へ近づくと、どこからともなく音楽が聴こえて人が忙しなく行き交っていた。
「わっ……」
肩にドンッとぶつかって、一瞬よろける。
「ったく、邪魔だよ」
私を見て眉間にしわを寄せる。
「……すみません」
謝ると、チッと舌打ちをして去って行く。
他人の何気ない言葉さえも私には鋭く突き刺す刃物のように思えて、グサリと心を抉った。
邪魔にならないように端っこの方に寄っておこう……。
目の前をたくさんの人が行き交って行く。
誰も私には気づかない。
まるで自分が透明人間にでもなった気分。それともこの世界から私の存在が消えちゃった?
誰にも見つけてもらえないってこんなに悲しいんだ……。
私がいい子をやめたせいなのかな。
あーあ。
これからどうしよう。
お金もないし食べるものもない。寝る場所もなければ、頼る相手もいない。
メモリーに登録されているのは、お父さん、早苗さん、元友人二人、そしてあお先輩。
クラスメイト全員のグループメッセージみたいな場所はあるけれど、今まで一度も使ったことないし、こんなプライベートな事情みんなに教えられるわけない……。
私、いい子を演じてたくせに全然友人いなかったんだ。
友人ともすれ違ってる今、私は一人だ。
あんなに頑張っていい子を演じてたのに、終わるときってあっという間だなあ……