毱花、慎一、洸介、亜依
数日後
数日後


数日後。

急いで戸籍謄本と婚姻届を準備した。
2人で書き込む。

毱花が話をし始めたら止まらなくなった。

「私こんな嫌な気持ちを慎くんに見せたくなかったのかも⋯⋯ 。
お母さんたち、16年間、他の誰とも付き合ってないってお互いバカみたいに盛り上がって、じゃ、最初から何だったのよって。
両親は私が8歳の時、離婚した。
親が子供に会えないからって、お互いの家を1週間に一度ぐらい行き来させられた。
でも、お兄ちゃんとだって仲良かったのに別れて暮らさせられて、お母さんも働いてていそがしくて、いろいろ思ったのに、それで何でって。
勝手にすればいい。
私もお兄ちゃんと同じ気持ち。
今さらあの人たちと暮らすには、もう遅いよ。
こんな素直じゃない私。
嫌な気持ちの私を見せたくなかった。
慎くんとずっと一緒にいたい。
お母さんたちみたいになりたくない。
だのに、黙っていたことで、慎くんを傷つけてしまったんだね」

慎一はゆっくり毱花に言った。

「癒してよ毱花、一生」

毱花はふわりと笑って、慎一の頭を抱きこんだ。耳と髪がくすぐったかった。

「お兄ちゃん、あんな口調だけどゲロ甘だからね。
もう、ゲロゲロよ。
虫歯になるぐらい、優しくて甘い人なんだ。
お兄ちゃん、お母さんが大好きで、帰る時いつも震えてた。
あんな繊細で優しいお兄ちゃんを、あんな思いをさせたことも両親が許せない。
子供がいなけりゃ、うまくいくってこと?私達が邪魔だったんじゃない、ばかみたい。
私、こんなこと考えてる」

慎一は毱花に言った。

「お母さんと同じ年になったら、分かるかもよ」
「分かりたくなんかない!」

と毱花は被せるように強く言った。

「一時でも別れちゃうような選択をする人の気持ちなんて分かりたくない!」

毱花は、一生にただ1人だけ、慎一とずっと思いあって生きていきたい、それは慎一も同じだった。
同じ気持ちで、一度きりの一本道に踏み出す。
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