シンデレラ・ラブ・ストーリー ~秘密の城とガラスの靴の行方~
第24話 大きくなった招待状
メイド長のミランダは食堂にいた。
調理場ではなく、テーブルで古そうな本を読んでいた。ほか三人のメイドは、せわしなく調理にはげんでいる。
「昔の晩餐会メニューを再現したいのですが、わからないことが多くて。昨晩に、先代のメイド長には聞いておいたのですが、やはり難しいです」
晩餐会メニュー。ツリーだけでなく食べ物まで大ごとになっている。気になっていたことを聞いてみた。
「シェフは、いないのですか?」
これほどのお城なら、シェフがいてもおかしくない。でも今日まで姿を見たことはなかった。
「それがですね、その先代のメイド長が追いだしたんです。あるじが見てないことをいいことに、まったく仕事をしない人だったそうで」
そうか、エルウィンは眠っている。さぼろうとすれば、いくらでもさぼれるのか。でもシェフを追いだすとは、その先代メイド長、かなり気の強い人だ。
「なかなか厳しい人だったんですね」
「そりゃあもう! わたくしなど何度怒られたか」
食堂に、お年寄りの女性が入ってきた。メイド長が、その女性を見ておどろく。
「ドロシー様!」
杖はついていたが髪を結いあげ、上品なワンピースを着た老女だった。この人が先代!
「おおミランダ、心配でいてもたっても」
先代のメイド長は、そう言って調理場に行こうとしたが、足を止めた。エルウィンに気づく。
「旦那様」
おじぎをしようとしたのを、あわててエルウィンが手を取る。顔をあげた老女は、涙を流していた。
「お目にかかれることができるとは、この上ないよろこびです」
エルウィンが、ふと思いついたように言った。
「イザベラ?」
「はい。イザベラは母でございます」
「そうか! イザベラは結婚したと聞いたが、あなたが娘だったか」
「おばあちゃん、泣いてるの?」
モリーが近づいて、心配そうに声をかけた。
「おお、これは可愛らしいお姫様。泣いてはおりませんよ、嬉しいだけです」
「はい、どうぞ!」
モリーは手にしていたカードを、ドロシーに差しだした。ドロシーは、カードをあけると、笑顔で、うなずいた。
「話に聞いた、お客様ですね。わたくしは、ミランダの手伝いをしに来ただけで」
「いや」
エルウィンは腕を組み、なにかを考え込んだ。
「旦那様?」
老女の声には答えず、部屋にいた人たちを、ひとりずつ見つめる。
「モリーは言った。みんなでクリスマス・パーティーだと」
次に窓ぎわに行って、外の様子をうかがった。なんだろう、とっても、嫌な胸騒ぎがする。
「グリフレット」
「はい」
急に、エルウィンの口から執事の名前が出てきて、びっくりした。そして「はい」と返事をした執事にも、びっくりした。いつの間にいたのだろう。
「パーティーの招待状を至急送ってくれ。これまで城に関わってきた人、これから関わる人、すべてだ」
「かしこまりました」
執事は、少し、おどろいた顔を見せたが、一礼をして退出しようとする。わたしは、おどろくなんてもんじゃない。娘の一言は大きくなって、雪だるまどころか、雪崩だ。
エルウィンが、執事を今一度、呼び止めた。
「間違えるなよ、すべて来賓としてだ。それに主催者は、このモリー・リベラだ」
調理場ではなく、テーブルで古そうな本を読んでいた。ほか三人のメイドは、せわしなく調理にはげんでいる。
「昔の晩餐会メニューを再現したいのですが、わからないことが多くて。昨晩に、先代のメイド長には聞いておいたのですが、やはり難しいです」
晩餐会メニュー。ツリーだけでなく食べ物まで大ごとになっている。気になっていたことを聞いてみた。
「シェフは、いないのですか?」
これほどのお城なら、シェフがいてもおかしくない。でも今日まで姿を見たことはなかった。
「それがですね、その先代のメイド長が追いだしたんです。あるじが見てないことをいいことに、まったく仕事をしない人だったそうで」
そうか、エルウィンは眠っている。さぼろうとすれば、いくらでもさぼれるのか。でもシェフを追いだすとは、その先代メイド長、かなり気の強い人だ。
「なかなか厳しい人だったんですね」
「そりゃあもう! わたくしなど何度怒られたか」
食堂に、お年寄りの女性が入ってきた。メイド長が、その女性を見ておどろく。
「ドロシー様!」
杖はついていたが髪を結いあげ、上品なワンピースを着た老女だった。この人が先代!
「おおミランダ、心配でいてもたっても」
先代のメイド長は、そう言って調理場に行こうとしたが、足を止めた。エルウィンに気づく。
「旦那様」
おじぎをしようとしたのを、あわててエルウィンが手を取る。顔をあげた老女は、涙を流していた。
「お目にかかれることができるとは、この上ないよろこびです」
エルウィンが、ふと思いついたように言った。
「イザベラ?」
「はい。イザベラは母でございます」
「そうか! イザベラは結婚したと聞いたが、あなたが娘だったか」
「おばあちゃん、泣いてるの?」
モリーが近づいて、心配そうに声をかけた。
「おお、これは可愛らしいお姫様。泣いてはおりませんよ、嬉しいだけです」
「はい、どうぞ!」
モリーは手にしていたカードを、ドロシーに差しだした。ドロシーは、カードをあけると、笑顔で、うなずいた。
「話に聞いた、お客様ですね。わたくしは、ミランダの手伝いをしに来ただけで」
「いや」
エルウィンは腕を組み、なにかを考え込んだ。
「旦那様?」
老女の声には答えず、部屋にいた人たちを、ひとりずつ見つめる。
「モリーは言った。みんなでクリスマス・パーティーだと」
次に窓ぎわに行って、外の様子をうかがった。なんだろう、とっても、嫌な胸騒ぎがする。
「グリフレット」
「はい」
急に、エルウィンの口から執事の名前が出てきて、びっくりした。そして「はい」と返事をした執事にも、びっくりした。いつの間にいたのだろう。
「パーティーの招待状を至急送ってくれ。これまで城に関わってきた人、これから関わる人、すべてだ」
「かしこまりました」
執事は、少し、おどろいた顔を見せたが、一礼をして退出しようとする。わたしは、おどろくなんてもんじゃない。娘の一言は大きくなって、雪だるまどころか、雪崩だ。
エルウィンが、執事を今一度、呼び止めた。
「間違えるなよ、すべて来賓としてだ。それに主催者は、このモリー・リベラだ」