キミの名前を呼びたい。
「椛、今日あたし朝練あるから先行くね!」
いとこの梓ちゃんは、陸上部に入っている。
ショートカットで、ハキハキとしてて、そこら辺の男子よりカッコイイんじゃないかな。
私は首を縦に振る。
「筆談用のノートとか忘れないように!じゃ!」
あの日の事故以来、私は梓ちゃんの家に住んでいる。
梓ちゃんは私の素っ気ない文章でもちゃんと分かってくれる。
声が出ないこと以外は、普通なのに───
『行ってきます』
と書かれたページを梓ちゃんの両親に見せる。
「「行ってらっしゃい」」
梓ちゃんの両親は声が出ない私でも、嫌な顔せず引き取ってくれた。