冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。




高校の入学式のあの日、私は色とりどりの爽やかな桜の美しさも目に入らないくらいに緊張していた。


私はあの日、新入生代表としての身に余る大役に打ち震えていた。


大勢の新入生たちの前で、代表としてあいさつをしなければいけなかったから。


私みたいなとりたてて成績もよくないぼんやりした生徒には荷が重すぎる。


理事長の娘である以上仕方がないのかもしれない。


けどわかっていても辛い。


昔から父に気を使った先生たちによって、代表生徒に選ばれることが多かったんだ。


だけど、期待に答えられた試しは一度もない。


だって私はどこにでもいる、いたって普通の生徒だから。


いや、もとい普通以下の生徒だから。


徹夜して何度も書き直した挨拶文も全然自信がなかった。
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