冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
彼の話が終わると生徒達のいるほうからは、案の定割れんばかりの拍手が聞こえてきた。


どうしよう、今にも走って逃げ出したい。


「おい、おまえ大丈夫かよ、次だろ?早く行けよ」


いつの間にか戻ってきた彼に肩を揺さぶられていた。


ぼんやりして石のように動かなくなった私に気が付いて話しかけてくれているんだ。


ハッと我に帰り、また気持ちが沈む。


「でも、私なんて……」


瞳にたまった涙がこぼれ落ちそうになる。


「無理です……」


卑屈のカタマリになってしまった私。


「時間がないんだから早くしろよ」


苛々したような声で言われてポカンとした。


「へ?」


ひどいよ、こんな時にそんな怖い顔で冷たいこと言わなくてもいいじゃない。
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