冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
だけど私の文章を好きだと言って、見守ってくれる人が少なくとも1人はいるから。


だから、下手くそでも最後まで頑張りたいって思った。


何度も詰まりながらようやくあいさつ文を最後まで読み上げて深くお辞儀をした。


顔を上げたときには、目の前からは温かい拍手が聞こえてきた。


涙が出そうだった。


舞台の上からでもわかったんだ。


何人かの生徒が笑顔でうんうんって頷いてくれていたのが嬉しかった。


舞台の端を見たらさっきの彼の優しい笑顔があってますますホッとした。


(もしも勇気が出ない時は隣の人に頼ってもいいと思います。

私達は偶然隣りにいるわけではないからです。)


彼が褒めてくれたフレーズがうかんだ。


彼は確かに私に勇気をくれたんだ。


おかげで一歩踏み出せたんだよ。


ありがとうって今すぐに伝えようって思って舞台から下がった。
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