冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「つまり花ちゃんは千景が大好きなわけだ」


「うんっ」


力一杯うなずく彼女を見たら、なんとも言えない気持ちになった。


「うんうん、そうか。よかったな千景、彼女を大事にしろよ。
じゃあーな、俺さきに行くな」


伊達は満足そうに頷いてニヤニヤ俺に笑いかける。


「おい一緒に帰ればいいだろ」


「ばーか、この鈍感男」


そのまま伊達は俺たちに手を振ると、先に走って正門を出て行ってしまった。


なんだよ、鈍感男ってもしかして俺のことかよ?


訳が分からなくて、花の方を見たらパッと目があった。


「ごめんなさい。私、雨城くんと二人きりで帰りたくて」


申し訳なさそうに謝ってくるから、ちょっと驚いた。


「……あ、そっか、うん」


確かに、俺って鈍いのかもしれない。
< 130 / 351 >

この作品をシェア

pagetop