冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「だって、私にしたら1日10分は貴重なんだもん。伊達くんはいっつも雨城くんと一緒にいられるでしょ」


「……」


なんだろう、この胸の奥がむずがゆくなるような感覚。


上目遣いにジッと見つめられて、急いで目をそらせてしまった。


「今日ね、ずっと雨城くんのことを思いながら待ってたんだよ。一緒に帰るの初めてだからすっごく楽しみで」


「そうか」


こんな短い返事しかできない俺はほんとに間抜けなんだろうな。


だけどこんな時俺はどう反応したらいいのか本当にわからない。


花はしょっちゅうこうやって俺への気持ちを素直に溢れさせてくる。


始めは何とも思わなかったんだけど、じわじわ効いてきているというか。


正直言うとかなり照れ臭い。


俺だったらこんな風に好きな気持ちを、ストレートに相手に伝えられるかな?


いやいや、そんな自分なんて想像もつかない。

つい先日も入学式の日に初めて出会った時の話をされた。


彼女には悪いけど俺はあんまりその時のことを細かく覚えていなかった。


覚えてはいなかったけど、話を聞いた時に彼女との不思議な縁を感じたのは確かで。


花は他の女子達とは違うような気がする時がある。


もちろんまだ、彼女にそんなこと言わないけど。
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