冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
この声、このシルエットに覚えがある。もしかして。


恐る恐るその長身の彼を見上げたら。


「ギャッ、うそ、千景くん」


不機嫌そうに太ももをさすっている私の愛する彼氏がそこにいるではありませんか。


「花、か弱いお嬢様かと思ってたら、いいキックするんだな」


はぁってため息をつきながら、嫌味気に言われてしまった。


「ご、ごめんなさい。でもどうして?」


「いや、花に会いに来たらこいつが変なことしてたから」


よくよく見たら、千景くんは拓海くんを片腕だけで羽交い絞めにしている状態で。


足をじたばたしながらなんとか振りほどこうと頑張る拓海くん。


まるで、網にかかった魚みたい。


そっか、拓海くんが私に後ろから抱き着いた瞬間に千景くんが引き剥がしてたすけてくれてたんだ。
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