冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
そうとも知らずに、私ったらちょうど真後ろにいた千景くんに蹴りを入れてしまったなんて。


ううっ、はしたないところを見られてしまった。もしかして幻滅されたかな。


「おまえ、離せよこら。おまえなんかと抱き着きたくないんだよっ」


拓海くんは真っ赤になりながらギャーギャー騒いでいる。


千景くんはようやく拓海くんを開放して、こう言った。


「2度と花に触るなよ。それから誰が10分男だよ」


「な、なんだよ。本当のことだろうがっ」


だけど、拓海くんの声は上ずっている。


根っからのお坊ちゃんの彼は喧嘩なんて一度もしたことがない。


小柄な拓海くんは体格からして明らかに分が悪いから、ちょっと及び腰になっているみたい。


「まあまあ、ふたりともそんな熱くならんとき。喧嘩なんてしてケガしたらつまらんで」
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