冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
私はなんて言われようとかまわないけど。


彼を好奇の目にさらし続けるなんて耐えられないよ。


「いこっ、千景くん」


そう言って彼の腕を引っ張って教室を出て行った。


「ごめんね。せっかく会いに来てくれたのにうちのクラスの女子達が騒いで変なこと言って……」


廊下に出ると、彼の腕を掴んだまま謝った。


私がこの学園の理事長の娘だから、千景くんと付き合いだしたことで変な風に噂されているのは知ってる。


千景くんが嫌々付き合わされてるんじゃないかとか。


もっとひどいのは、千景くんが打算的な気持ちから私と付き合って理事長に取り入ろうとしてるんじゃないかとか。


聞くに耐えないものばかり。


やっかみや嫉妬が半分くらいはあるんだろうな。


けど、こんな根も歯もない噂で彼を煩わせたくないよ。
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