冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「あやまらなくてもいいよ」


彼は10分だけ私の言いなり、だからお願いしたらたいてい叶えてくれる。


だから、私を振り払わないんだよね。


1日10分しか会えない代わりにって彼が自分からそうするって言ってくれたんだ。


たぶん断られないだろうなって安心感があるから、私はどんどん欲張りになっていっちゃう。


止めてくれないと、これ以上調子に乗ってしまいそうで怖いな。


千景くんはどう思ってるのかな。


こんなこと嫌じゃない?


千景くんの白いトレーナーからは柔軟剤とおひさまの香りがする。


彼の体温が心地よくて、頭が真っ白になるくらい幸せ。


ドクンッ、ドクドク。


ひやっ、胸の鼓動が激しく騒いでる。


この音ってどっちの心臓の音なんだろう。


自分だけが緊張しているような気がしていたけど、彼の胸からも早い鼓動が伝わってくる。
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