冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
えっ、えっ、こんな時に兄弟喧嘩?


「だから、ギャクタマ狙って……フガッ」


達樹くんが最後まで言い終わらないうちに、横にいた直樹くんが後ろから羽交い絞めにして口をふさぐ。


「あの、兄をよろしくお願いします。それじゃあ」


直樹くんは取り繕うようにニコッと笑顔を向けてくれた。


「失礼しました」


そのまま力任せに達樹くんを引きずって急いで、隣の部屋に入って行った。


そして閉じられた扉の向こうからは、ドタバタ暴れるような音が響いてきた。


なんだろう、達樹くんが言いかけたことって……。


もしかして玉の輿の反対の逆玉とか?


やっぱりどうしてもそんな風に見えちゃうのかな。


それはやっぱり、私と千景くんが明らかに釣り合っていないからかもしれないな。


あ、どうしよ。


急に暗い気持ちになってしまいそう。
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