冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「もうこんな時間。10分すぎちゃったね。私もう帰るね」


「花?」


腕時計を見たら予定していたよりももう5分も過ぎてしまっていた。


だけど、彼の口から出たのは意外な一言で。


「もう少しいたら?」


「え?でも」


「せっかく来たんだし」


あれどうしたんだろ、千景くん。いつもの学校の時と何となく違う。


確かに最近10分が伸びちゃうことも時々あるけど。


「弟たちのせいでゆっくりできなかったし」


「うん、でも」


だけど、彼の方からはっきりと時間を伸ばそうとしてくれたのは初めてで。


嬉しいはずなのに、ちょっと不安になった。


だって、千景くんの生活の邪魔になったら。


そのうちこの関係が重くなったりしないかな。彼が負担に感じたりしないかな。


10分ルールすら守れない無能でわがままなうざい女って嫌気がさしたりしないかな?
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