冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
そこまで心配したら、いてもたってもいられない。


「あ、でもダメだよ。ちゃんと10分は守るから。
それが千景くんと付き合うときの約束なんだし」


「花?」


意外そうな顔できょとんとする彼。


「じゃあこれで、千景くんもこのあとバイトだよね。それじゃあ、お邪魔しました」


一気にまくしたてて、一目散に階段を下りて行った。


「おい花……待てって」


後ろから彼の声がしたのはわかっていたんだけど、立ち止まらなかった。


私どうしちゃったんだろう。


周りの人の目とか、気にしないようにしようって思っていたけど。


振り回されないようにしようって思っていたんだけど。


やっぱり不安でたまらないよ。


だって、千景くんの気持ちがわからないんだもん。


私のことを本当はどう思っているのかなっていつも不安だから。


だからせめて彼に嫌われないようにしなきゃって思ったんだ。


1日10分でも構わない、それでも私は幸せ。


このままずっとずっと彼の彼女でいたいよ。

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