冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
どんなにせかせか時間に追われていても、花のふんわりした笑顔を見たら、ふと立ちどまる俺がいる。


混じり気のない好きって感情を、ストレートにぶつけてくるから、胸の奥がくすぐったくなる。


ほんとうに人生何が起こるかわからない。


弟の達樹や親友から、堅物だとか変人の女嫌いなんて呼ばれていたこの俺にこんな日が訪れるなんて不思議だ。


ようやくバイトが終わって家路についていた。


今、彼女に電話をかけようか迷っている。


今日慌ただしく帰ってしまった彼女が少し心配だから、フォローの意味で電話をした方がいいかな。


って言うのは、建前で。


ただ単に彼女の声が聞きたいだけなのかもしれない。


そういえば彼女、夜は鷹月学園の創立記念パーティーに出席するとか何とか言ってたっけ。


それって何時くらいに終わるものなんだろう。


今電話してもいいんだろうか。
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