冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
そういえば、今日の彼女は随分気合を入れてお洒落をしてきていたっけ。


清楚なワンピースにきっちり化粧までして。


制服姿とはまた違って見えてドキッとしたんだけど、それと同時になんだか知らない人みたいに見えた。


彼女が遠い人のように思えて、素直に褒めてあげることが出来なかった。


彼女が鷹月学園の理事長の娘で、お嬢様だってことは初めからわかっていたことなのに。


なんなんだよ、この胸の奥のモヤモヤは。


普段2人でいるときは、そんなこと忘れていたんだよな。


彼女は普通の女子高生じゃない。


そのことが、急に不安になってきたなんて言ったら彼女はどんな顔をするかな。


べつに具体的に何が心配だというわけじゃないけど、このままでほんとにいいんだろうかって考えてしまうんだよな。


こんな俺のまんまでもずっと彼女は好きでいてくれるのかなって。


「やっぱ電話すっかな」


そうだな、ウジウジ考えていても時間の無駄なだけだ。
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