冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
気がつけば、怒りのままに叫んでいた。


わっ、俺いま結構恥ずかしいこと言ったな。


「千景くん……」


花の嬉しそうな放心したような声。


いや、喜んでる場合じゃないだろ、早く拓海を部屋から追い出せよ花。


「千景くんが私のことそんなに心配してくれてるなんて。
どうしよ、嬉しくて今夜眠れないよ」


彼女のまの抜けたような呑気な声。


「花、あいつに代われ。俺がビシッと言ってやるから」


「大丈夫だよ。拓海くんなんて私全然怖くないから」


「なに言ってんだよ。
あいつだって男なんだからちゃんと警戒しろよ。簡単に部屋になんて入れたら危ないだろ」


少し強い口調になったけど、抑えられなかった。


「ああ千景くん……私、しあわせ」


「いやだからさ」


どこまでも噛み合ってない会話。
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