冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
ちえりちゃんはいたずらっぽくウインクしながら私の後ろを指さす。


「なによ、ちゃんと花のことが気になって見に来てるんじゃない」


振り返ったら、テニスコートのフェンスの向こう側ににスラリとしたシルエットの男子が横を向いて立っていて。


「たまたまこっちも体育だったから……」


ふてくされたような声で答えるその人は。


「ちかげ……くぅん」


すぐさまフェンスに駆け寄って彼の顔をまじまじと見つめる。


照れくさそうに目をそらせる姿が、ほんっとにカッコよくて。


あうっ。
私、鼻血ブーッしちゃいそう。


「話しかけようと思ったけど、そっちの会話が止まらなかったから」


「気が付かなくてごめんね」


顔も身体もフニャフニャになっちゃって恥ずかしいけど、会いに来てくれたことが嬉しすぎる。


「それじゃあこれで」


「ええ?」
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