冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「ううん、いいの。それより千景くんの弟さん達に彼女だって紹介してもらえてうれしかった。
妹さんたちも可愛かったし」


「……そっか」


彼はほっと安心したように小さく笑った。


「俺、つまんないことばかり気にしてた。花は花なのに……」


彼はそう言って私の前髪にそっと触れる。


「え?」


「いや、今度ちゃんと話すよ。それよりさ……」


彼はフッと口元を緩める。


「ん?」


「随分可愛い格好してるんだな、そのわりには全然テニスしてなかったみたいだけど」


「え?え?今なんて?」


いま、彼の口から信じられないワードがでたので、聞き間違いかと思った。


「そのテニスウェア良く似合ってる、可愛いよ」


「本当?う、うれしい」


可愛いって確かに言った。


そんな風に彼に褒めてもらえるなんて思いもよらなくてびっくりした。


「花、あのさ」


千景くんは急に真剣な顔で私を覗きこむと、意を決したように口を開いた。
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